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お礼の時効
第5章 あなたは私が守ります、ずっと
待ち合わせの喫茶店に入ると、浅野が本を読んでいる姿を見つけた。
浅野は春季の姿に気がつくと、席を立ち会計を済ませ、春季の背中に手を添えてきた。

「お腹がすきましたね。さ、行きましょうか」

浅野が自分に向ける笑顔に何も言えなくなってしまい、ふたりでレストランへ向かった。

そのレストランは昔のままだった。春季とその男が毎晩のように夕食をとっていた頃と全く変わっていなかった。
互いに忙しい新人の時に、ここで待ち合わせしていろんな話をしていた頃を春季は思い出していた。

テーブルにつきメニューを眺め、当時のものがまだ残っているのを見ると懐かしさを感じた。

すると店の入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきて、その声の主の姿を見たとき春季は凍り付いた。

別れてからもう四年。別れた直後にその男は自分が働いている弁護士事務所の若い事務員と結婚した。
二人の結婚の知らせを聞いたのが、自分と別れてから一ヶ月後だったことを考えると、自分と付き合いながらそちらとも並行して付き合っていたということだろう。
春季は当時その男と同じ事務所で働いていて、その男の結婚式に出席せずにその事務所を退職した。
今思えば、なけなしの意地だったと苦笑いしてしまう。

相手もこちらを見かけたようで、互いに軽く頭を下げて挨拶した。すると、その男の横にいた自分の元の同僚達が春季に気がついて、その男に声をかけた。

「おい、あれ。お前の元のオンナだよな。男連れじゃないか。しかもあれは……」

春季はその声に不快感を覚えてしまった。
自分と一緒に居るために浅野に迷惑をかけてしまう。

すると春季の耳に信じられない言葉が聞こえてきた。
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