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お礼の時効
第6章 今日は私とベッドで過ごしましょう
「今日はお休みですよ、春季」

ベッドからでようとしていた春季の体を抱きしめて、和臣は耳元で囁いた。
耳介に触れる唇の動きにぞくりとした。体の力が抜けそうになったが、何とか押しとどめた。

「今日は書類整理をしたいのよ、離して頂戴」
「嫌です、今日は一日ベッドで過ごしましょう、春季」
「浅野検事、離して! ちょっと! どこ触ってるのよ!」
「どこって……柔らかいおっぱ-----
「やだっ! 揉まないで! やめて!」

和臣の指が春季の乳首に触れた途端、春季は体をピクンと跳ねてしまった。

「やあ……っ……」
「春季の感じるところは全て把握しましたからね、もっと気持ちよくしてあげますよ」
「駄目だってば! ちょっと! やだっ!」
「言うことを聞かないと刑事訴訟法第60条の適用により身柄を勾留しなければなりませんね。10日間ずっとベッドからださないようにしないと。なんなら今から……」
「やめてってば! だいたいなんの罪で勾留するのよ!」
「14年前私の心を奪ったことは窃盗罪に値しますよ?」
「それを言うなら逮捕監禁罪で訴えるわよ! だからっ、揉まないでってば!」
「春季、そこは違う。刑法194条の特別公務員職権濫用罪に該当するかもしれませんよ?」
「職権乱用はしちゃいけないの! だから離してってば!」

動きを止めない和臣の手に反応してしまう自分がうらめしい。
こんなに自分は快楽に弱い人間だったかと無性に情け無くなった。

和臣は楽しそうにくすくす笑っている。何を訴えても、切り替えされて追い詰められる。嫌じゃないけど、やめて欲しい。

冗談じゃない、このまま和臣と一緒にいたら、どんどん自分は弱くなってしまう。

「だから! 離して!」

和臣は春季を拘束していた腕を解いた。ベッドから立ち上がり、脱ぎ捨てたシャツを拾い上げると、リビングに向かう。

「仕方ありませんね。なら私も仕事してきます」

和臣は仕方ないとばかりに大きなため息をついて、春季の背中を眺めていた
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