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お礼の時効
第7章 まだ春季の心にあの男がいる
体が痛い……徐々に意識が浮上して目が覚めた。

汗ばんだ肌はなかなか火照りが収まらず、いまだ体の奥で火がくすぶり続けている。
体のあちこちが軋む。昨夜の行為の激しさで体が重くて動かない。
腕に力を籠めて、体を起こそうとするが、全く力が入らずにすぐにベッドに沈みこんでしまう。
内腿に這われた和臣の手が動き、そこの潤みをたしかめてきた。

胸元にチリリと痛みが走る、そちらを見下ろすと、自分の乳房に和臣が顔を埋めて吸いついている。また赤い痕が増えている。おそらく自分が意識を失ったあとのものだ。

「離して……」
「嫌です」

昨夜から何度も求められた春季は、か細い声で訴えた。
しかし、和臣はそれを聞かず、否の一言だ。

体に廻された和臣の腕がまた背中を撫で始めた。悔しいけれどぞくりとした。求められることは嫌ではないが、今回は異常だった。

和臣は所有を示す赤い痕を体中に残し、それを確認するように眺めては、またそこに吸いついていた。
何度もやめて欲しいと訴えても、それをやめようとしない。
執拗に体を貪られ、過ぎた刺激に涙がこぼれだし、咽がかれるほど叫んでいた。
そんな自分の姿を見たときの和臣は、ぞくりとするほどの色気を漂わせ、それに何度も飲まれてしまった。

「体が痛いの……、離して……」
「離さない、春季……」

一途すぎる和臣の言葉に酔いそうになる。だめだ、このままだと心を丸裸にされかねない。力を振り絞り体を起こすと、和臣が必死にしがみつき呟いた。
普段決して見せない感情的な和臣の姿に、心が乱れる。

「まだ……春季の心にあの男がいる……」

和臣の言葉の意味を、朦朧とした頭で考えようとしても、思考がまとまらない。

「ねえ、お願い……もう離して……」

最後は涙声になっていた。
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