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お礼の時効
第10章 あなたと一緒に幸せになりたいの
 和臣からプロポーズされた日から二年が経った。
 この間二人は華燭の典を挙げ、引っ越しした翌年に和臣が異動で北海道へ単身赴任することになった。
 春季は祥子が働く調査会社の企業内弁護士として、毎日慌ただしい毎日を送っていた。

 和臣はほとんど宿舎にいないようで、執務室が居住空間のようだと電話ではなしていた。春季は心配になり、夏休みと年末など長期の休暇を取れたとき和臣のいる函館に様子を見に行くこともあった。

 その日も仕事納めを終えて飛行機で函館に向かった。和臣の宿舎についてドアを開けると、どこか見覚えのある殺風景な景色が広がっていた。そう、一番最初に和臣のマンションに来た日に見たソファとテーブルとテレビしかないリビングと同じだと春季は思った。
 ソファの下には枕が転がっている。思わず春季は口元をゆるめ、その枕に顔を埋めた。和臣の残り香に目を細める。すると玄関のドアが開く音がして、その時を待つ。リビングのドアが開いて和臣が入ってきた。かなり急いで帰ってきたのだろう、頭の上に雪がついていた。荒い息に、和臣が急いで走って帰ってきたことを知った。しかもこの寒空にコートも着ずに腕に掛けたままだ。春季は両手を広げ和臣を待った。

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