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仮面というもの
第2章 美しい妻と可愛い彼女と……
こうして俺は、もやもやしたままお昼を食べ、午後の診察を始めようとしていた。
診察室に入ると、遥が暗い顔をしてハサミをいじっていた。
「……遥?ハサミに何か不具合でもあるのか?」
そう問いかけると、肩をピクッとさせてゆっくり振り返った。
「……旦那様。ですって。
一文さん、奥さんに名前で呼んでもらえないのね。可哀想に……。」
「……は?」
俺は遥が何を言いたいのか分からなくて、言葉が出なかった。
「奥さん、綺麗な人でしたね。
綺麗だけど、冷たいわ。
普通、好きなら、怪しい女を見かけたら睨んだり、不機嫌になったりするものだと思いますが、彼女は怪しく笑ったわ。」
「遥は、俺が月に愛されていないと言いたいのか?」
「ええ、そうよ。
まあ、誰でも浮気している夫なんて愛せません。
私なら、一文さんだけなら浮気をしても、暴力を振るっても、愛せますけど。」
遥は力強く見つめてくる。
俺は、怒りか悲しみか、喜びか期待か、よく分からない感情をどうにか理解しようとした。
そして空気の読めない午後の診察開始のチャイムは、静かに鳴った。
診察室に入ると、遥が暗い顔をしてハサミをいじっていた。
「……遥?ハサミに何か不具合でもあるのか?」
そう問いかけると、肩をピクッとさせてゆっくり振り返った。
「……旦那様。ですって。
一文さん、奥さんに名前で呼んでもらえないのね。可哀想に……。」
「……は?」
俺は遥が何を言いたいのか分からなくて、言葉が出なかった。
「奥さん、綺麗な人でしたね。
綺麗だけど、冷たいわ。
普通、好きなら、怪しい女を見かけたら睨んだり、不機嫌になったりするものだと思いますが、彼女は怪しく笑ったわ。」
「遥は、俺が月に愛されていないと言いたいのか?」
「ええ、そうよ。
まあ、誰でも浮気している夫なんて愛せません。
私なら、一文さんだけなら浮気をしても、暴力を振るっても、愛せますけど。」
遥は力強く見つめてくる。
俺は、怒りか悲しみか、喜びか期待か、よく分からない感情をどうにか理解しようとした。
そして空気の読めない午後の診察開始のチャイムは、静かに鳴った。