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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
 

「これに懲りたなら、もっと常識的になって下さい。女なら妹なら、なにをしても、なにをさせてもいい……そんなふざけたことを仰られるのなら、こちらの動画を、すぐに不特定多数が見れる場所にアップさせて頂きます。あなたの発言に、世の女子は黙っていない。社会的制裁が加えられるでしょう、あなたや向島に」

 専務は立ち上がる。

「いいのか、そんなことを言って。お前が庇っているのは、お前の会社を裏切った奴だぞ?」

 鷹や鷲のように険しい眼差し。だけどたじろがない。

 許せないのだ。

――なにが怖いんだ、処女ぶって。それともお前にはまだ調教が必要か? また母親の前で犯して……。

 女というだけで、男の性の道具にされることが。

 過去を受け入れたあたしが、こうして第三者的な立場になって今思うのは……亡き父への憤怒と蔑視でもある。

 朱羽のようにすべてを受け入れて愛してくれる男がいる一方で、どうして父のように、女だということで性の対象としか思えない男がいるのか。

「あなたが彼女にさせた裏切りよりも、あなたの発言の方が重いということを思い知って下さい」

 あたしだって、記憶を封じられていても、満月の発作になって狂うほど苦しんできたんだから。

 それだけの傷をつけることだと思い知れ!! 恥を知れ!!

「この……っ」

 専務の手があがる。

 ぶたれる――。

「鹿沼主任!!」

 千絵ちゃんの声があがる。あたしは専務のプライドを傷つけたのだから、報復に逃げるわけにはいかない。

 ぶたれても、戦ってやる!!


「――ここは公共の場です。控えて下さい」

 専務の手を宙で受け止めていたのは朱羽だった。

「お前は……」

「香月朱羽と言います。あなたの噂は、忍月コーポレーションの宮坂専務から伺ってました」

 毅然と名乗り宮坂専務の名前を出す朱羽に、専務の顔が忌々しそうに歪む。
 
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