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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

 火曜日――。
 
 今日もあたしと朱羽、木島くんと杏奈が病室に常駐している。

 杏奈は自作らしい分厚いノートパソコンを持ってきて、朱羽とカタカタしながら会話している。

「ふふふ、いつ気づくかな、香月ちゃん」

「きっと腰抜かしますよ。すみませんが、見張っていて下さいね」

「おっけー。杏奈のプログラムちゃんも、頑張れ!!」

「ふふふふ」

「ふふふふふ」

 ……この美男美女のプログラマー達、なにかよからぬことをしているらしく怖い。

 過去を語った杏奈は、いつになくすっきりとした顔をして、しっかりとした目をしている。ひとりではないと、自分も戦力になると、そう意志を決めた……そんな様子だ。

 だけど思うんだ。

 杏奈、本当に向島専務のこと、忘れられたのかな。

 偏執的に杏奈を追いかけ憎悪を向けるのは、その裏はまだ強く杏奈を求めているに等しい。そんな向島専務から逃げ回った杏奈は、彼が狂的になってしまったからと、その愛を冷ますことは出来るのだろうか。

 真剣に愛し合っていた仲であり、泣く泣く身を引いたのであるのなら。

 ……あたし達は、幾ら杏奈が心に決めたからとは言え、愛する男を窮地に陥れる……そんな酷なことを杏奈に押しつけているんじゃないだろうか。そんな気がして止まない。

 あたしが杏奈で、朱羽が専務だとして同じ立場なら、あたしはどうしたろうか。身を引いたとしてもあたしは、朱羽を忘れられるだろうか。

 真剣に愛した男に敵対することが出来るだろうか――。


 
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