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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「え? 逆上させたら……話が拗れるんじゃ……」
「大丈夫。拗れる前に、俺が逆転勝利を収めてくる」
賛同の完成の中、朱羽はあたしの耳に囁いてくる。
「……勝ったら夜、ご褒美貰うよ?」
誰もがこちらを見ていないその僅かな時間、スローモーションのように囁いた朱羽の目が妖艶さに満ちる。
明日なにをするのかわからないドキドキと、朱羽のこの目の意味がわかるドキドキに、あたしは息苦しさを感じながら、朱羽からそっと目をそらして顔を紅潮させてしまった。
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その夜、ネットでは、好評だったうちのプログラムソフトが酷評に一転した。さらに向島のプログラムを、証拠が提示されてもいないのに、うちのプログラマーが向島のものをパクっているという複数人の書き込みが、大手の至るところのコメント欄になされていた。
さらにはうちの内情を晒すような書き込み、誹謗中傷……それが今日、タイムリミットである金曜日の午後になってもずっと続く。
うちに否定的で、向島を擁護するようなコメントが時間が経つにつれて増殖し、会社も悪戯電話が沢山かかってきているようだ。
どこからどこまでが向島の仕業で、どこまでが悪質な誹謗中傷に乗じた愉快犯なのかよくわからないが、あたしが病室の朱羽のノートパソコンを見ている限り、吐き気がしてくるほどの悪意がある。
結城と衣里は木島くんを連れて、朝早くから木島くんのお父さんである木島弁護士事務所に行った。きっとこの件の相談なんだろうとあたしは思った。
「なあ、カワウソ」
社長がベッドで横たわったまま、それでもいくらかは力強くなった声を出して、さわさわしながら傍に居るあたしに言った。
「会社は……、皆はどうしてる?」
あたしは社長に今の状況を告げた。
「攻撃されるがままの、防戦一方というのは辛いです」
しかしあたしの言葉を受けた社長は、口元をつり上げてあざ笑う。
「いや……、時期を見ているんだろうよ」
社長は天井を見上げるようにして、続ける。
「その証拠に、香月と三上は慌ててないだろう?」