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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

 怖いよ、だけど一方的な言い分はあたしは好きじゃないんだ。

「杏奈がどんな思いであなたから去ったのか、それもわからないで杏奈にそんな目を向けるのが、あたしは許せません。杏奈を恨むほど好きだったのなら、どうして杏奈を守れなかったんですか!!」

 怒りが止らない。

「どうして杏奈の幸せを一番に考えないで、一方的に追い詰めるんですか!! 杏奈を追い詰めるくらいなら、まずはあなたの父親が立ち入れない環境を作ってから、杏奈を連れ戻すべきでしょう!? 極悪人の父親がいるのに、杏奈が戻れると思いますか!!」

「鹿沼ちゃん……」

「お前になにがわかる」

「ええ、あなたじゃありませんからあなたの考えなんてちっともわかりません。ただ第三者の他人から言わせて貰えれば、あなたは、杏奈というあなたの"玩具"が壊れそうになったことに気づけなかった。その事実にまず向き合うべきです」

 あたしは専務を睨み付けた。

「それと、いかにあなたにとって"玩具"だろうと、あなたが欲しているのをわかっていたから、宮坂専務は杏奈を守ったんです。あなたが出来ないことを、向島の家や血筋とは無縁で、向島に対抗出来る彼だから守れた。宮坂専務がいなければ、杏奈は完全に壊れていた事実とも向き合うべき!!」

 専務は忌々しそうな顔をしている。

「自分が出来なかったことをしてくれた宮坂専務に感謝するならまだしも、恨むなんてどういった了見ですか!! 宮坂専務には熱愛している彼女がいるんです。吾川沙紀さんっていう……」

 その時、朱羽がスマホを取り出し、なんと通話を始めてあたしはぎょっとした。

「もしもし、沙紀さん? ……いや、うん。ちょっとね、教えて貰いたいことがあるんだ」

 そしてそれをスピーカーにして、受話音量を上げた。

『いいよいいよ、私に役立てることがあるなら、なんでも言って?』

「沙紀さんが渉さんと付き合ったのっていつだっけ」

『なんなの、唐突に』

 本当に唐突すぎる。
 
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