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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「いや、ちょっと教えて貰いたいなって」
『いつも耳にタコできるほど、私も渉も言ってたのに?』
「あははは。沙紀さんの口からまた教えてくれる?」
『いいよ。正式に付き合ったのは今から四年前。丁度朱羽くんが忍月コーポレーションに来たあたり。私、めっちゃ朱羽くんに警戒されたよね』
「だって沙紀さん、渉さんを投げ飛ばすから。凄く怖いひとだって」
『だってあのひとドMなんだもん。投げ飛ばすと喜んでるし』
「愛情確認なんだよ、渉さんひねくれてるから。渉さん、他の女性関係とか問題なくなったよね」
『そりゃあ。私、二股とか浮気とか絶対許さないし。そんなことした日には、別れるって言ってあるし』
「沙紀さんは、三上さんと会ったことあったんだっけ?」
『それがなくて。話だけは聞いてたよ? 渉、興信所使って友達の向島専務が付き合っていたのが、三上さんなのか確かめていたから。死にそうなほどすごくやつれて、今とは全然違う顔だったって。それだけあっちの専務が追い詰めていたってことでしょう? 酷いよね、本当に恋人だったのかしら』
向島専務がぎりと歯軋りをしたのがわかった。
「沙紀さんは、渉さんと三上さんが怪しいって思わなかった?」
『思わないね。渉は浮気しない。唯一勘ぐったのは陽菜ちゃんだったけど。だって電話ですごく親しそうに話すから、こいつまた再発したと』
あたしは居たたまれなくなって言った。
「ごめんね、沙紀さん。あたし専務のことは、最初からちっともこれっぽっちも恋愛感情感じたことなかったの」
『あはははは。大丈夫よ、陽菜ちゃん。もう渉からちゃんと聞いたし……って、なんで陽菜ちゃんの声? え? 朱羽くん? まさか聞かれてたとか……』
「ごめんね、一旦切る」
そして朱羽は電話を切った。
「彼女は吾川沙紀、渉さんと四年前から付き合ってます。彼女のおかげで渉さんは変わった。女性関係もきっちりとした。そんな彼の姿を、あなたはわかっていたはずだ。仮に沙紀さんの名前が出なくても、そういう相手がいると」
向島専務は朱羽を睨み付けて、なにも言わない。
あたしはふと思いついたものを口にした。
「まさか、それが杏奈だと思ったんですか!? 二股かけられていたと」
ひくりと専務の口端が動く。