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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「それだったら、宮坂専務と沙紀さんがふたりでいるところを動画で隠し撮りすればよかったですよ。本当に胸焼けするくらい、ふたりのイチャイチャは凄いです。宮坂専務は、身体全体で沙紀さんに愛を語ってますし」
ごめんよ、宮坂専務。でも本当のことだし。
「渉さんは、沙紀さん相手だと昔からそんなものですよ。それで沙紀さんがうざいと投げ飛ばして、渉さん喜んでいるくらいなんだし。それが渉さんなりの愛情確認のようで、ちょっとねじまがってるんです、あのひと沙紀さんが初恋のようなものだから、構いたくて仕方がない」
朱羽はそう言うと、専務に向き直る。
「渉さんは、沙紀さんを伴侶にと決めている。この言葉の持つ重い意味、あなたはおわかりですよね。仮にも渉さんを友人と思っていた時期があるのなら」
専務から応答はない。
「沙紀さんは普通の一般人です。どこかの社長の令嬢だとか、元華族だとか金持ちのお嬢さんではない。リストラされてばかりの父親に代わって、五人の弟を学校にいかせるために必死で働いている。渉さんからの援助を一切断りながら。昔から勤労少女なんです。そんな沙紀さんを渉さんは選んだ。すべてを敵に回す覚悟で――」
RRRRRR……。
突然電話が鳴ったが、専務は取らなかった。
「そして俺も、彼女を……選びました。これから戦う覚悟です」
朱羽の手が伸び、腰に回された。
「辛いと思うのは、あなただけじゃない。三上さんが今でも欲しいと思うなら、プライドを捨てて土下座してでも、彼女に愛を請え!! 追い詰めるくらいなら、手を差し伸べろ!!」
専務相手に、朱羽の激高するところを初めて見た気がする。
電話が朱羽に気圧されたように、鳴り止んだ。
「それも出来ずに、今の彼女が幸せを感じている場所を壊すな!! 彼女の敵になるなんて、本末転倒だろうが!!」