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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「香月ちゃん……」
しかし専務は笑い出す。
「なんで俺がこの女を愛している前提なんだ。この女は俺の味方だの愛してるだの散々ほざいた挙げ句、俺を簡単に捨てた。俺の意見も聞かず言いたいことだけ言って、勝手に消えていなくなった。俺がその制裁を加えるのはいけないことなのか」
非情ながらも、どこか悲しげな目――。
「この女のせいで、俺は本家の人間として結婚させられた」
杏奈はびくりと震えた。
え、彼は既婚者だったの!?
それで千絵ちゃんにも手を出していたの!?
「だけど一年しないで、すぐに死んだ。俺が怖いとか精神狂わせて。ちょっと刻んでやっただけなのに、ヤワな女で」
くつくつと喉で笑った後、専務はまっすぐに杏奈を見た。
「……俺が本家に行きたいと、いつ誰が言った。……お前がいない、ひとがひとじゃなくなる……、こんな……地獄に」
垣間見えた専務の本音。
彼は思い描いていたのか、杏奈と共に進む未来を。
「宗……「気安く呼ぶな!!」」
杏奈の声を専務は遮断した。
「誰がこの女を愛しているって? 俺がこの女のためにお前らの会社を潰そうとしていたとでも思っていたのか? ……自惚れるな!!」
ぎらりと憎しみが籠もった目が、杏奈に向けられる。
「俺は向島財閥を背負う人間として、忍月を潰さないといけないんだよ。俺に刃向かう奴を、俺に説教をする奴を見逃してはいけない」
"~しないといけない"
彼はそうやって、残忍になっていったのか。
……そうやって、父親と同じサディストに。