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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
コンコン。
ノックがされた。
「専務、申し訳ありません。お電話が繋がらず……」
あたし達を案内してくれた秘書と思われる女性が入ってこようとしたのを、専務はそちらを見ずに怒声で拒否した。
「来るな!! 電話も繋ぐな!!」
「しかし……」
「俺の命令を聞けないのか!!!」
「は、はい……」
慌ててドアが閉められた。
「俺はお前達と和解する気は全くない。勝つか負けるか、ただそれだけだ」
杏奈が悲しげな目で専務を見ている。
かなり変わってしまったんだろう。
向島財閥の人間となった彼は彼なりの重責を担っているのかもしれない。
……だけど。だけどね。
「させません。あたし達は、心を持った人間です。強い心で作り上げた会社を、あたし達が守ります!!」
向島専務の都合で潰されたくないんだよ。
あたし達だって苦しくても必死に生きてる。愛を注いでいる会社なんだから。
「ははははは!! そんなもの、俺が手に入れた向島の力で潰してやる。そして俺に説教をしようとしたあいつも潰す。ちりぢりにしてやる」
あいつ――宮坂専務のことか。
「あなたは力をそんなことに使いたいんですか!!」
杏奈が鎮めた声で言う。
「あなたが思い描いていたものは、そんなこと?」
「……黙れ」
「あなたが手に入れたがっていた力を、そんなことに使うの?」
「黙れ黙れ!! 俺に意見するな!! 俺はお前達より宮坂より上にいる。勝つために俺は婚姻して、次期当主の座を射止めた。このまま、当主に上り詰めてやる。女を出世と性の道具にして、俺を馬鹿にして俺を理解しない奴らをねじ伏せてやる!! 俺にものを言いたいなら、俺に勝ってから言え!!」
……ああ、彼は味方を無くして孤独に心を病ませていたんだろうか。
勝ち負けにこだわり、その苛立ちをきっと千絵ちゃんは受けて。