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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
専務は頭を抱えていた。
そして彼はスマホを取り出し、発信履歴からある電話番号を出した。
「……ああ副社長。俺は、手を引きます。今後一切、関知も助力はしませんので。シークレットムーン買収の件もなかったことに」
『ちょっと待ってくれ、ちょ……』
そんな慌てる声を無視して、専務は電源を押してスマホを切ると、机の引き出しから便箋を取り出し、机の上にある万年筆を取り、こう書いた。
『私――向島宗司は、今後一切、向島開発及び向島財閥を使ってシークレットムーンに手出しをせず、また、忍月コーポレーションの副社長らと裏で手を組み、宮坂渉を陥れないことをここに約束します』
そして日付を書き、自筆の名前の横に印鑑を押した。
「……だが、仕事としては忍月に刃向かうぞ」
「正々堂々とするのなら、渉さんも受けて立つでしょう。ですが忍月の副社長とまだ繋がりがあると思われたら、即座に賄賂の件公表します」
「……わかった」
「念のため、今の会話も録音させて貰っています」
朱羽のボールペンと思っていた……胸ポケットに入っているものは、ICレコーダーだったらしい。
朱羽が上を捻ると、向島社長の声がはっきりと聞き取れた。
「ふっ、抜け目ないな」
「お褒め頂いたついでに、忍月の副社長と完全に手を切るという証拠を見せて貰いましょう」
念書を懐にしまいながら、朱羽は笑った。
「俺達の要求は、まさかこんな生ぬるいものだけだとはお思いじゃないですよね?」
向島専務よりも残虐な顔つきで――。