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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
杏奈が泣いているのに、澄んだ夜空には、星が瞬いてとても綺麗で、
「どうして宗司と普通の出会いが出来なかったのかと今でも思う。私の親が借金をしないで、私が普通にあのまま成長して宗司に会っていたら、私はきっと今みたいに諦めなかったと思う。私は親に捨てられ、社長に虐げられてきたという過去があるかぎり、私は……上り詰める宗司の隣には立てない。宗司や社長が悪いんじゃないの。私が……私の過去に打ち勝てなかったから。宗司といても、常に負い目は払拭出来なかったから、私はずっと背伸びをしていたの……」
杏奈を儚げに照らし出す。
「だから宗司は、こんな杏奈なんて忘れて、相応しい環境に居て欲しい。社長の後を追い前を進もうとする宗司に、穢れている杏奈は……、向島に仇なす奴らの恰好の餌となる。杏奈は足手まといになりたくないの」
「杏奈……」
「好きでも愛していても、どうにもならないことがある。特に身分差は」
杏奈があたしを見てから、朱羽を見て言う。
「鹿沼ちゃんと香月ちゃんは、きちんと出会えたのだから、ちゃんと隣り合って生きていてね、……香月ちゃんは宗司とは違う。鹿沼ちゃんは杏奈と違う。ふたりは負けないで欲しい。だってふたりは……」
そして杏奈は微笑んだ。
「最初から杏奈の本質を見ようとしてくれた。それって中々出来ないことだから。……私は、ふたりが付き合ったのは、互いの本質に惹かれあったからだと信じてる。だってふたりは、心もとっても素敵だもん。杏奈保証する」
綺麗な綺麗な杏奈の笑みは、星の瞬きのように目を奪われる。