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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
***
「では、勝利を祝しまして、カンパーイ!!」
結城の声で、コンビニで大量に調達したノンアルコールの缶が、コンコンとぶつかり合う音が響く。
東大付属病院、社長を交えたその部屋には、テレビでの会見を知って駆けつけた全社員と、宮坂専務と沙紀さんが居た。
「なんで結城や衣里がテレビに出ているのよ、あたしびっくりしたんだから! しゅ……課長も杏奈も知っていたというのに!! あたし達、友達じゃなかったの!?」
「だから、俺達が記者会見が始まる六時まで、向島専務の気を引いて動きを封じるためにお前達がオフィスまで行ったんだ。そこでお前が挙動不審に目を泳がせて、時計ばかり見ていたらどうなるよ?」
結城は大笑い。
「いやまあそうだけれど」
「昨日陽菜が拗ねて家でしそうになっていた間に、きっちりと分担で動く話はついていたの。これもうちの優秀なプログラマーふたりのおかげよねー」
衣里の声に、再び全員がふたりの缶に、自分の缶をぶつけあう。
「しっかしさ、このふたり神業だよね。株だけじゃない、どうして向島ネットワークに入ってやばいもの見つけれるのかしら」
あたしの感嘆に、朱羽と杏奈が顔を見合わせてにやりと笑う。
「入っていませんよ。あれは三上さんの案です」
「へ?」
杏奈は愉快そうに言う。
「賄賂の件は杏奈が、向島開発に居た時から知っていたんだ。だからそれを香月ちゃんに口にして貰っただけ。丁度香月ちゃんが、ハッキング宣言していたようだし、香月ちゃんの腕があればそれぐらい可能だから、まんまとひっかかったわけ。杏奈内心、賄賂の資料を処分していたらどうしようってヒヤヒヤしてたんだ」
「三上さんの腕をご存知だから、ひっかかったんですよ?」
「香月ちゃんの腕だよ」
ふたりは和やかだけれど、あたしは驚愕したままだった。
つまりそれは――。
「え……、じゃああれ、課長のはったり?」
「はい。証拠がありませんからね。だから結城さん達が余罪を追加することは出来ないんです。向島の腕だと、こちらが本当にハッキングしていたかどうかを調査することは不可能ですし」
朱羽の眼鏡のレンズが光る。
「プログラマーは、むやみやたらとハッキングしないよ? プログラムを作るのがお仕事なんだから」
杏奈が朗らかに笑う。