この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「誰もいないところで、あなたとふたり、ずっと……生きていけたら。ずっと愛し合えたら」
「……ふふ、駆け落ち?」
「そう。嫌?」
「いいよ、どこに行く?」
「てっとりばやく、アメリカはどう?」
「英語わからないよ!」
「俺がいるから大丈夫。あなたはI LOVE YOUだけを俺に言ってればいい。くれぐれも他の男に言うなよ? 誘われてもついていかない、いいね?」
「心配しすぎだって」
……現実から逃げ切れないことをあたしも朱羽もわかっている。
逃避行をしたところで、なにも解決しないということを。朱羽が逃げれば、朱羽は相応の代償を支払う。
……それは、恐らく専務だ。
あたしも、朱羽を守ってきた彼を代償には出来ない。
朱羽にこれ以上、代償を支払わせるわけにはいかない。
「アメリカで、ふたりで色々なところに行って、家ではずっとあなたを抱いていたい。……凄く幸せだろうな、俺」
だからこれは、湯にのぼせた束の間の夢物語。
「今も似たようなものだよ? 頑張って戦って、旅行しよう?」
今が感じる幸せは、ひとときの夢――。
「……そうだね。……今も幸せだ。あなたが隣にいるんだから。俺を好きになってくれたんだから……」
朱羽は沈黙のあと、そう切ない顔で目を伏せた。