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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「朝からいっぱいしたじゃない!」
「まだ足りない。10年だよ、俺の愛。それがこんな短い間ですべて語れると思うか? ……一生涯でも足りない」
あたしは真っ赤になって俯いた。
「おじいさんとおばあさんになっても、ラブラブでいようね」
ああ、そういう日がくるのかな。
これから戦いを控えている朱羽とあたしの間に。
どんなに確固たる心で愛し抜こうとしても、それでもなにか不安は拭えるものではないから。
……きっと朱羽もそうなのだろう。
だから、朱羽の家で幸せな時間を過ごしたことを、愛し合った時間を、維持させようとしているように思えた。
朱羽の指が、首から提げたままのペンダントに絡む。
「あなたの未来は、売約済みだからね」
横からちゅっと頬に唇を落とされた。
「……~~っ」
「なに真っ赤になってるんだよ。本当のことだろう? 返事」
「……はい」
「ああ、なんて顔をするんだよ。可愛いくてたまらないじゃないか」
何度もちゅっちゅっと頬にキスを食らった。
「朱羽って、見た目からはここまで甘々な感じがしなかったなあ」
クール中のクール。
氷の貴公子っていう感じで、甘い言葉など縁遠いというイメージだった。
「ああ、好きなひとには付き合っても、ちゃんと気持ちを伝えてスキンシップしないと駄目だとアメリカで教えられたから。じゃないと逃げられるって。……冗談じゃない。それなら毎日言ってやる」
「それは釣った魚に~っていう奴かしらね」
「そうそう。だからいつもちゃんと餌を頂戴。俺を愛してね」
「あたしが朱羽を釣ったの? 逆じゃない?」
「なんで逆なんだよ。俺は10年前から釣られてたんだよ。ようやく今、愛情という餌を貰えたんだから。まだまだ腹ぺこだよ」
「貪欲~」
「元はと言えば、誰のせいだよ」
「ごちそうさま、とっても美味しかったです」
「過去系にするなよ」
「あはははは」
笑い合う朝の風景。
長く続けばいいな、こういう穏やかな時間が。
決して、嵐の前の静けさにならぬよう、今は心の中で強く願うしか出来ない。