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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
――あなたごと、俺の家族になって?
忍月に踏みにじられた母子の辛さが、昇華できるのだろうか。
辛い思いをして生きてきた朱羽が、幸せになれるのだろうか。
おこがましいけど、もしこの先、あたしが朱羽と家族になれたら、朱羽にもう寂しい想いをさせない――。
あたしは無意識にお腹に手をあてた。
今はいない赤ちゃんが、いつか天使のように羽ばたいて、お腹に降りてきてくれたらいいなあと思いながら。
後片付けした後まったりしながら、ベランダに出て葛西臨海公園を展望する。
当然ながら二階に住むあたしの部屋からは、夜景といえば真向かいの古いビルくらいで、朝からこんなに素晴らしい景色を眺望できるわけはなく。
燦々と照りつける太陽を視界に入れながら、朱羽が輝かんばかりの微笑みを浮かべた顔を傾け、唇を重ねた。
「穏やかな今日が、この先……毎日来るように、頑張ろう」
唇を離して、朱羽は切なそうに笑った。
「そのために俺も、ベストを尽くす。決して忍月に負けない。だから俺についてきて」
「うん。ついていく。あたし根性はあるから、朱羽が挫けそうになったら、ちゃんとあたし引っ張り上げるからね」
「はは、それは頼もしい」
あたしは真顔で言った。
「……今日、言おうと思う」
「ん?」
「結城に。会社辞めること」
「………」
「月曜日の株主総会が終わったらと思ったけど、それは友達としてどうかと思うの。決心したなら、ちゃんとすぐ話したい。隠していたと思われるの、あたしが結城の立場でも辛いから」
「それによって、社長になろうとする結城さんの心が乱れても?」
朱羽の顔が悲壮感に覆われた。