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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「近くに居たら居たで重荷なのに、だけど死んで欲しくなくて。俺がひとりになるのが怖くて……そのストレスで心臓病を患ったのだと思う」
「朱羽……」
「もっともっと言葉をかけて理解しようとすればよかった。もっともっと俺がどう思っているのか、理解して貰おうと頑張ればよかった。ずっと、母ひとり子ひとりでやってきたというのに。母さんさ、どんなに男に狂っても、俺には手を出さなかった。それは息子だとわかっていたからだと、気づいても今更で……」
「………」
「……母さんがこうなったのは、忍月の義母の暗躍があったからだと、渉さんから言われたよ。結局渉さんのお母さん同様、俺も母さんを死なせてしまって。……後悔ばかりだ」
どんな言葉も出てこなくて、あたしは朱羽の後ろから抱きついた。
「なんだよ、陽菜も甘えっ子?」
「うん、甘えっ子」
朱羽はなにも言わずにナイフを調理台に置き、彼の前に回ったあたしの手を取り、口づけた。
「……あなたがいてくれれば、それでいい。こうやって、俺を愛してくれれば、寂しくなんてないから。……」
「……うん」
「予期せぬ出来事で、取り返しがつかなくなって後悔しないように、あなたにはちゃんと伝えるから。どんなに愛しているかって」
「……うん」
「それでも、俺の想いのすべては語り尽くせないだろう。どうやれば伝え尽くせるか、よくわからない。十年抱え続けてきた想いは、こんなに膨れあがって苦しいほどなのに」
このひとが愛おしい。
「あたしは、朱羽への想いを抱えたのは三週間とまだ短いけど……、この先もずっと朱羽を愛し続けるよ。朱羽への愛情、膨らませるからね。毎日、朱羽を好きになるからね」
「ん……」
あたしの手の甲の上に、ぽたりとなにかが落ちた。
「お母さんの分も、朱羽を愛し続けるからね」
「ん……」
ぽたり。
あたしはそれに気づかないふりをして、朱羽の背中に頬を寄せて、静かに涙した。