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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「だけど、どうやって……」
「午前中に電話をかけたんだがな、取り込み中らしく。もう少ししたらかけてみる。……お前は営業ではないが、彼女はお前が合うと思う」
そしてあたしを見ると、口元をつり上げて言った。
「……俺からの、ラストミッションにしろ」
心臓がどきんと跳ね上がった。
社長が結城になるからという意味か、それともあたしが辞めようとしているのがわかっているという意味か。
「しゃ、社長……それは……」
「彼女が味方につけば、お前も動きやすくなる。忍月の中でも」
「しゃ、ちょう……」
社長はわかっている。
恩知らずのあたしがしようとしていることを。
「何年お前を見てきたんだ。そんな化け物が出たように驚いた顔をするな。俺は、お前が幸せになるのなら、なんでも承認する。……だけど、他の奴らは知らんぞ?」
「……っ」
「幸せになるために、決断しろ。だがな、鹿沼」
社長は優しく笑った。
「俺以上に、睦月を始めとしたあいつらは、ちゃんとよく仲間のことを考えてるぞ? もしかすると、渦中にある香月や、補佐しようとするお前より、状況を見ているのかもしれん」
「社長……」
「お前も香月もひとりじゃないことを、常に心に置いておけ。切り捨てようとしても、切り捨てられないものが、どんな力に化けるか未知数だぞ」
「はい」
その時、衣里の声がした。
「陽菜、ちょっとティッシュ借りていい?」
「バッグの中にあるから、適当に使って!!」
「もう行け。鹿沼、また電話したら呼ぶ」
「わかりました」
ぺこりと頭を垂らしたあたしは、はっと思い出した。
バッグの中に、退職願を入れてたじゃないか!!
「衣里、ちょっと待って、衣里!!」