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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

「鹿沼を取り込んだところで傷の舐め合いだ。鹿沼を放っても結果は同じ。お前が落ち着くまでに潰れるぞ、シークレットムーン」

「だから!! 潰さないように俺がっ」

「お前は、全知全能の神様じゃねぇんだよ、香月!! 意気込んでてもお前にも限界があることを認めろよ! お前は人間なんだぞ!? どんなに頭よくてもどんなに金があっても、俺達庶民と同じ生身の人間なんだ! 痛めつけられれば、傷ができて血を吹くんだ! 身体も心も!」

「……っ」

「もっとたくさん泣いて笑っていいんだよ、お前は。馬鹿やってボケて突っ込んで、お前……俺と笑っていられただろう? どんなに鉄仮面被ってても、お前は普通の感情がある人間なんだ」

 結城はきっと、憎まれ役を買って出たんだ。

 結城が、朱羽を見捨てるはずがない。結城は優しくてお人好しで。……そう変わったのが、今の結城なんだから。

 皆から慕われて、あたしは八年も友達をしていた奴なんだから。

「……俺達はっ、お前や鹿沼を犠牲にしたくねぇんだよ!! 香月、鹿沼、俺達は……お前達が思っている以上に、お前達が好きなんだよ。お前達を失いたくねぇんだよ!!」

 結城は朱羽の腕を掴んだ。


「香月!! お前を忍月にはいかせねぇぞ!! おかしな奴らがいる忍月なんかに、お前を染まらせてたまるか!! 鹿沼も染まらせないぞ!!」

 そしてあたしの腕も掴んだ。


 朱羽の目から――、

「香月だって、俺達の家族だろうが!! なに鹿沼に良い格好して、他人顔をしてこんなもの出しやがるんだよ、そこが一番むかつく!! お前にとってシークレットムーンはどうなんだよ、お前にとっては"帰る処"じゃねぇのかよ!!」

 涙が一筋、零れ落ちた。

「俺の……帰る処?」

「そうだろう、香月。お前はうちに来た時点で、嫌でも俺達の家族になったんだよ」

「……っ」

「――香月朱羽、お前に尋ねる。俺達は、お前にとってどうでもいい存在か!?」

 朱羽は唇を噛み、ゆっくりと頭を横に振った。

「お前にとって俺は!! 簡単に捨てられる友達か!?」

 これにも彼は、真剣な顔で頭を横に振った。
 
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