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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「どちらも取らないの、朱羽くん。ううん、どちらも取ると言えばいいのかな。……もっと、貪欲に。あなたと渉なら、知恵がある。そしてシークレットムーンには、要所要所のいいところに"役者"や"助言者"が居て、機動力がある。私と陽菜ちゃんだって、ふたり揃ったら無敵だと思う。私、虐めにも負けないし、陽菜ちゃんになにかされそうになったら、敵を投げ飛ばしてあげられるし、私になにかされそうならきっと陽菜ちゃんなら敵に噛みついてくれる」
沙紀さんは笑う。
「……とな、沙紀に言われてさ。ちょっともがいてみねぇか、朱羽。俺とお前とで。それで無理なら他の弟達もひっぱり出して。ただ言いなりになるのではなく」
専務も笑う。
「俺も、お前をこのまま忍月に渡す気はねぇよ。そしてシークレットムーンも、弟達の会社も潰される気もねぇ。確かにカバのガッツはお前の力になるかもしれねぇし、見合いもぶっつぶせるかもしれねぇ。だけど、100%じゃねぇんだ。カバだけでは、お前の味方は少なすぎる」
朱羽は唇を震わせた。
「お前、俺の力もあてにしねぇで、ひとりで突っ走ろうとしてただろう? 他の弟達……お前の兄達の助力も、ハナからあてにしてねぇな」
「……っ」
「だけど、こいつら……シークレットムーンの連中がいるならまた話は別だ。こいつらを働かせろ」
朱羽は周りを見渡し、そして結城に視線を合わせると、苦しそうに目を細めた。
「駄目だ。あなた達が忍月の力の犠牲に……」
結城が笑った。
「ならないように、お前も俺達も頑張ればいいだけだろう? なあ、鹿沼。お前の信条はなんだっけ?」
あたしは言った。
「One for all, All for one」
「香月。お前は俺達全員のために動け。そして俺達全員はお前のために動く。俺達はそのつもりだと、もう既に話はついていたんだけど。……お前はどうだ?」
結城を始め、衣里も杏奈も木島くんも専務も、皆笑っていた。
ああ、強い。
心も未来も明るく強いものとなる。
あたし達を信じて、助けようと手を差し伸べてくれる人達の存在は、力になる。
朱羽はあたしも会社も助けてくれた。
今度は、朱羽が助けられる番だ――。