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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
***
「なあ、カバ。お前の本音を聞きたい。だから朱羽を遠ざけた」
宮坂専務は、あたしだけを客間に連れると、ベッドの上に腰掛け、膝の上に肘を置いて両手の指を組み、険しくも思える真摯な表情を向けた。
「朱羽と俺は、未来をかけて忍月財閥に立ち向かう。その時、苦労するのは沙紀とお前だ。俺と朱羽の想い人であるというだけで、生死がかかった……矢面に立たされる可能性がある」
「はい」
あたしはカーペットが敷かれている床に正座して、真顔で返事をする。
「お前の日常は壊されるかもしれない」
「はい」
「今なら引き返せる。今なら、お前も朱羽も傷つかない。それでもお前は、俺達兄弟ですら、憎悪と同時に畏怖する忍月財閥を相手に、朱羽と戦う気か?」
専務から"兄弟"と聞いたのは初めてのこと。
朱羽の兄であってくれたことに感動を覚えながらも、あたしは専務の目をしっかりと見て言った。
「傷ついて血を流すことは覚悟の上。あたしが朱羽と出会った意味は、朱羽を守るためだと思っています」
「カバ……」
「シークレットムーンの皆も朱羽の盾になってくれました。だったらあたしは、朱羽の矛となって朱羽を傍で奮いたたせます」
専務は軽く目を伏せ、口元だけで満足げに笑みを作る。
「……お前、朱羽と退職してどうする気だった?」
それは射るような鋭い眼差しで。
獲物になった心地がしながらも、あたしはひと言ひと言に思いをこめて、きちんと答えた。
「朱羽が、たとえ専務を気遣ってでも次期当主になると決めたからは、あたしも本家に乗り込むつもりでした。勿論その前の見合いはぶっ潰して」
「は……。朱羽は言ってなかったのか? 本家を牛耳る義理の母が……」
「聞きました。朱羽の母親も、専務の母親も殺されたと。そして朱羽も現当主と義母さんに、目の前で殺されかけたと。手を差し伸べてくれたのは専務だけだったと」
「……。……乗り込むって、潰すってどういう風に」
「決めてませんが、たとえ殴り合いになっても頑張ろうかと」
専務は愉快そうに声をたてて笑った。