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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「お前、忍月にはSPが居るんだぞ? 朱羽もそれ、知ってるくせに」
「その時、考えます。罠をしかけるのもいいかもです。頭脳派の朱羽の爆弾を本家に仕掛けるなんてどうでしょう」
「よくねぇよ、すぐお前達捕まるだろうが。警察やマフィアより怖いぞ、忍月は。戸籍消されて、黒服に東京湾に沈められるぞ?」
それは、OSHIZUKIビルに流れる噂じゃないか。
「頑張って浮上します。こう見えて、水泳は得意です」
「お前なあ。具体的な案を朱羽と話し合ってねぇのに、体当たりなんて無鉄砲すぎるぞ。大体お前、怖くねぇのかよ。人間を人間と思わない場所に行くというのに。俺、目の前で母親殺されてるんだぞ!?」
「不安や恐怖はないかと言われたら、あります。ないとは言い切れない。あたしが相手にする敵の規模もまったくわからない。だけど、朱羽を守るためなら、あたしは傷つくのは怖くない。朱羽が好きだから、朱羽への想いゆえにあたしは行けるんです。そのために仲間を捨てようとしました。あたしの心の拠り所であった仲間達を。それくらいの覚悟だと言えば、わかって頂けますか?」
専務の瞳が揺れている。
「ただ……これだけは怖い。朱羽を守ってくれる専務には正直に話しますけど」
「なんだ?」
あたしは唇を噛みしめ、作った拳に力を込めると、乱れた息を整えて言った。
「あたしも向島の千絵ちゃんと同じなんです。あたしは……妹の前で、実の父親に犯されました。あたしは、それがショックで、睡眠療法でも効果がないほどの、月に一回満月の時に発作のように狂って、朱羽の母親のような……色狂いになりました。九年前、朱羽と寝たのも、満月のせいでした」
専務の黒い瞳が、じっとあたしを見ている。
「ずっと、それに苦しんでいました。結城に助けられながらも、あたしは恋愛をしたくなかった。あたしは穢れていて、恋愛は刹那に終わるものだと思っていました。だけど、朱羽に助けられ、朱羽にすべてを受け入れて貰えて、朱羽なら……永遠を信じられるようになったんです。今こうして専務にお話出来るのも、朱羽のおかげで克服できそうなところまできたからです」
「カバ……」
「もしもあたしの過去が朱羽の足を引っ張るようになったら、その時は……」
あたしはまっすぐに専務の目を捕えて、言った。
「朱羽の前から消えたいと思ってます」