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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

 ~Eri Side~

「うわ、香月マジにごめんな。力加減してたとはいえ、腫れ上がっちゃってねぇか、ほっぺ。歯は欠けてねぇよな」

「大丈夫です、俺の……自業自得だから気にしないで下さい」

「いやいや、結城さん、思い切りいったっすよ? 結城さんの力加減は、普通の渾身っす!!」

「うう……お前を傷物にしちまったか。俺責任とって……」

「ああでも、課長は傷物になっても主任が貰ってくれるから、大丈夫っす!!」

 香月が照れ照れとなり、結城が肩を落とす。

「アホらし……」


 正直、香月が忍月財閥の御曹司と聞いて、私は特に驚くことはなかった。

 だってほら、最初からなにかを隠している、私みたいなタイプだと思ったし、出来すぎる男だったから、「ああなんだ」程度だった。

 だけど私以外は驚天動地の出来事だったらしく、しばらくは顎が外れるんじゃないかと思うくらい、顎が開ききっていたと思う。

 香月の正体で動じる私ではなかったけれど、専務の口から、その家のために見合いをして、好きでもない女と政略結婚をして後を継げと言われていると聞かされた時、私は人ごとには思えない衝動に叫んだ。

――お前のためなら、皆どこへでも行って土下座をしてでも、必ず勝ち取る。……最初にそう言ったのは、あの真下だぞ!?

 多少誇張はされているが、確かに私は叫んでいた。

 絶対なんとかしたいと。


 陽菜を苦しませたくない、そう思う気持ちも確かにあったけれど、あたしは、香月をかつての私と同じ目に遭わせたくなかったんだ。

 香月の表情の変化は私もわかっている。

 香月が、まだ多少丁寧語は抜けていないものの、私達に"俺"と呼称を変えて、結城の冗談に笑って対応していること。なにか案があったら、まず結城に相談していたこと。

 それは単純に、結城が社長になるからではないだろう。

 陽菜を巡っての三角関係。恋愛の意味では恋敵であっても、結城と香月の間には、信頼関係が築かれて、そこには友情も芽生えていたのだ。
 
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