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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
***
全員が集められたリビング室。
「ええと……、ネコ探索?」
たった今、朱羽の言い出したことに、あたしは微妙な顔を向けた。
「はい。名付けて"幸運の白いネコを捕まえろ作戦"です」
腕組をしながら、眼鏡のレンズをキラーン!と光らせる朱羽は、至って真面目らしい。
それはそれでサマになっているから、そのことについては特筆することはないけれど、そのポーズが出てくる状況に、あたし達は思わず訝った顔を見合わせた。
朱羽は験を担ぎたいのだろうか。
気持ちはわからないでもないが、なんでネコ探索なんだ?
大体――。
「あのね、今ネコを探すような状況では……」
朱羽はテーブルにあるパソコンの画面をあたしだけに見せた。
それは、写真。
小さな白いふさふさとした毛を持つネコ。
おすまししているようなネコ。
思わず顔が綻ぶ。
「可愛い~。……だけどあれ? どこかで……」
そう、つい最近。
もっと言えば、夜……星空の元。
"みゃ~"
あたしは声を上げた。
「そうです。昨夜あそこで見たネコだと思います」
朱羽は腕組をしたまま、超然とした面持ちで見下ろしてくる。
……朱羽の調子が戻ったのかと、なんだか嬉しくなる。
だけどにやにやもしていられずに、聞き返す。
「それがなに?」
朱羽は眼差しに憂いを含ませた。
「迷い猫だったんです、このネコ」
「迷い猫?」
まあ確かにあんなところにいるのは迷っていたとしか思えない、首輪をつけた飼い猫だったけれど。
「このネコの飼い主は、かつての俺のような、重度の心臓病を患ったご高齢のご夫人だそうで。亡くなった夫の代わりに可愛がっていた愛猫だったらしく、逃げてしまってからは、病気も悪化してしまったとか」
「なんで香月がそんなこと知ってるんだ?」
結城の問いに、朱羽はパソコンを指さした。
「今の時代、情報は簡単に伝達できるもの。そのご夫人の嘆きように、近所の方々が協力して、猫の外見の特徴を張り紙やSNSに乗せたところ、瞬く間に拡散したそうで。パソコンでもトレンドタグ一位になるほど」