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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「ああ、それで見てたんだ、香月」
衣里が頷いている。
「協力者が増加しているのに、皆、そのご夫人の家の周辺しか探していない。俺達が見たのは、もっと離れていたのに」
「……そんな遠くまでなにをしに行ったっすか?」
木島くん、そこはスルーでいいから!
しかしスルーを決め込んだのは朱羽だった。話を続ける。
「さらに! 心ない人達が、似せ猫を連れてご夫人をぬか喜びさせて、謝礼金を分捕ろうとしているらしい」
カチン。
なんだそれは。
「うわ、ひっどいね。杏奈、そういうの許せない」
「ですよね。俺も同感です。陽菜はどう思います?」
「あたしも同感よ、すぐ本物を見つけてあげないと!! あのふさふさネコちゃんびくびくしていたから、もしかするとまた上に戻っているかもしれない。下にいたとしても隠れているかもしれないし。他のひとに探索頼んだら、またきっとそのおばあさん、お金とか色々毟り取られるだろうから、あたし達が探すわ」
あたしは、皆にパソコンを見せるように、パソコンをくるりと向きを変えて言った。
「ターゲットはこのふさふさの毛並みをした白いネコ。首輪が赤いの。すっごい可愛いネコで、"みゃ~"って泣くの」
鼻息荒く簡潔に説明したつもりだったけれど、皆の反応は微妙そうだ。
「それだけかよ、名前は?」
結城が腕組をして言った。
「知らない。名前を色々呼んでたら、行き着くんじゃない? おばあさんやおじいさんが名付けたのなら、"タマ"とか"シロ"とかだと思う」
また、なんとも言えない……哀れむような目が向けられる。
「だけど陽菜。相手は移動できる動物なんだよ? もしかするとそこらへん一帯にはいないかもしれないじゃない」
衣里の声を、朱羽が受けた。
「行方不明時は夕方四時。そこから八時間後には、ご夫人の家から、西武多摩川線ひと駅圏内にネコはいて、辺鄙な登り坂のところで蹲っていた。多分、空腹と疲労で動けなかったんじゃないかな。そこを無理矢理下に行かせたけれど、そこから歩けても大した距離を動いていない気がする」