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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

 しかし朱羽、いやらしいことをして、あたしを啼かせて……炙り出そうとするなんて。やだなあ、えっちの時のあたしの声って、子猫みたいな声なの?

「陽菜、そっちに行った!!」

「え……へっ!?」

 ぼんやりとしている間に、子猫がこちらに来たようだ。

 だけど草が長くて、どこにいるのかがよく見えない。草が揺れているのとがさがさとした音だけを聞いて、ここだと草むらに手を突っ込むが、掴んだのは泥。

「朱羽っ、そっち行った!!」

「陽菜、今度はそっちだ!!」

 朱羽とあたしは、姿が見えない子猫に翻弄される。

 もしかして子猫にとってみれば、遊んでいるつもりだとか?

「よし、捕まえたぞ!!」

 朱羽が持ち上げたのは、汚泥で真っ黒い毛を濡らして貧弱な輪郭を見せる、"なにこの奇妙な生き物"状態のもの。

 泥で汚れた黒い首輪だけが、飼い猫の証。

「本当にこのネコ? 随分と……きゃああああ!!」

 あたしが覗き込んだ途端、ネコはフーッと威嚇するようにして、あたしに向けてぶるぶるしたのだ。

 べちょっ、べちょっ。

 あたしの顔に、ネコの汚泥の飛沫。

「……っ」

 朱羽にはかけずに、器用にあたしだけかけるってそれはどういう了見?

 そうコメカミに青筋を浮き立たせながらも、まあ子猫のしたことにいい大人が本気で怒るのもどうかと思って、笑顔でその奇妙な黒い顔を覗き込むと。

 ぺちん。

 真っ黒く汚れた肉球が、あたしの頬を叩く。ネコパンチだ。


「みゃ~」


 ぷきゅっ、ぷきゅっ。

 さらには顔の至る処を肉球で押され、爪で引っかかれた。


「痛っ!」


「みゃ~」


 勝ち誇ったような子猫の声。

 随分、元気じゃないか。ひとの秘め事覗いて、探してきてあげたのに、そんな態度大きくていいの!?


「みゃ~」


 ぶるぶるっ。


「………」

「陽菜……」


 凄く、性格悪いネコだ。

 ……ネコにいたぶられたあたしは今、どんな顔をしているのだろう。

 そう思って朱羽を見上げれば、朱羽はなんとも気の毒そうな顔であたしを見ている。

 
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