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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「……なんで、あたしだけなのかね、このネコちゃんは」
ギンと睨むと、子猫は恐怖を感じたのか暴れて朱羽の手から逃れた。
宙からそのまま綺麗に着地すると、走って坂道を下る。
「結城さん、そいつです!! 捕まえて!!」
「え? なんか黒いものが……こいつがあのネコ!?」
「え、結城さん、いたっすか……うわあああ、ひとにぶるぶるなんて、ひどいっ……真下さん、そっちです!!」
「なにこれ!? ネコちゃん、ネコ早っ……杏奈、そっち!!」
「了解!! うわっ早っ、違うのよ遊んでいるんじゃなくて……逃げちゃった!! 皆、捕まえて、それよそれだからっ!!」
シークレットムーン総出の、汚いモップのような子猫の捕獲。
上だ下だと叫びながら、追い詰めるが中々に捕まらない。
ネコは喜びながら木陰の泥を身に纏い、弾むようにして走る。
「「待て~っ!!」」
「みゃ~」
完全に、子猫に遊ばれている人間の図だ。
そして……あたしはわかった。
このネコ、あたしと木島くんだけぶるぶるをする。
イケメンと美女にはみゃーみゃー可愛く鳴くくせに、あたしと木島くんが近くに行くと、ふぎーっと威嚇してぶるぶる。
なんだよ、ねぇそれひどいじゃないか!!
あたし、木島くんと同列!?
「いやいや、主任もひどいっす!!」
「そう?」
全員泥まみれになりながら、時折道路に出ようとして皆身体を張って止めながら、なんとか結城が捕まえたのは午後六時。
あたりが真っ暗になった中で、ネコの目だけが光る。
そして木島くんが飼い主に電話してくれて、飼い主を待つこと数十分。
キキーッとブレーキがかかる車の音がして、ドアが開いてひとが出てきた。
藤色の着物を着たおばあさんと、運転してきたらしい若い男と、まとめ髪をして黒いワンピースを着た女性だ。おばあさんが飼い主で、あとは家族のひとか近所のひとだろう。