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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「ネコのこの姿がお気に召さないのなら、綺麗にしてからお伺いします。きちんと綺麗にしますから、どうか代わりのものを用意しないで、唯一無二のこのネコに愛情を注いで下さい」
「私に指図する気?」
「……どう思われても構いません。ですが、せっかく助かったこの命を、飼い主であったあなたが奪わないで下さい。あたし達が全力で守った命を、どうか大切にして下さい。あたし達の自己満足で終わらせないで下さい。飼い主さんがいて、初めてこの子は生きれるんです」
あたしは大きくお辞儀をする。
「「お願いします!!」」
全員、あたしの後ろで頭を下げた。
そして続く沈黙を破ったのは、女性の方だった。
「あなた達の会社の名前は?」
「か、会社? シークレットムーンです」
「………。あなたの名前は?」
あたしの名前を尋ねられる。
「鹿沼、陽菜です……」
すると女性は嘲るように笑った。
「帰るわよ」
「ちょ……」
「車を汚したくないから、あなた達がヴァイスを私の家まで運んできてちょうだい。お風呂と夕食ぐらいは、用意します」
「へ……」
後部座席に乗り込んだ女性は、窓をあけて言う。
それは優雅に、上品そうな物腰で。
「まだ名乗っていなかったわね。私の名前は名取川文乃。……初めて見る他人のネコのために熱くなれるような社員さん達だとは、月代さんもいい部下を持ったわね。……あなた達に興味を持ったわ」
そして住所を言うと、車が発進した。
「名取川、文乃……?」
あたしはしばし呆然としていた。