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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「じゃあよかったんだ。彼女への接触……」
朱羽は嬉しそうに笑顔を見せた。
「しっかしよ、名取川文乃、一筋縄でいかなくねぇか?」
結城が困った顔を見せた。
「なんていうか、キーキー……ヒステリー系というか」
「でも、結城。話をわかってくれて、子猫を捨てないでいてくれそうだよ?」
「話はわかるのだと思います。だけど説得して納得してくれるまでがきっと大変で」
あたしも同感だ。
「それでも鹿沼ちゃんの言葉、杏奈達の言葉が通じたんだから、納得して味方になって貰うのもそんなに大変ではないと思うんだけど」
杏奈の声に皆が頷いた。
「……俺に策があります。おそらく、シークレットムーンの皆さんの空気が、彼女を味方につけることが出来ると」
朱羽の言葉に皆が朱羽に向く。
「どういうこと?」
「真心です。それがシークレットムーンの強みになります」
朱羽は悠然と言い切った。
「みゃ~」
……お前はいいから。
なんだかよくわからなかった。
真心なんて普通持っているものだし、なにひとつ特別性がない。
そう言うと、朱羽は笑った。
「その普通が出来ない人間達が、彼女の周りにいるんです。だからあなた達は普通でいて下さい。彼女が、大物であることを忘れて」
あたし達は顔を見合わせながら、肩を竦める。
「みゃ~」
お前はただのネコだから。
ライトアップされている日本庭園を横切りながら、母屋と思われる屋敷に向かった。
まるでやじまホテルのような広い玄関。先ほど見た藤色の着物を着た老婆と運転手があたし達を中から出迎えると、中にではなく、ネコごと外から別棟に案内される。
「皆さまで、お風呂をどうぞ」
「え、全員ですか!?」
「はい。当家の浴槽はかなり大きく、男女別に分かれておりますので、全員入れるかと」
って20名はいるのに。
それでもふたりでそういうから、あたし達は顔を見合わせながらもついていけば、かなり大きい瓦葺きの別棟の木の扉を横にスライドさせて中に入った。