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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

「左手が男性、右手が女性になります。ヴァイスは……どちらでも構いません。どちらでも慣れているので」

 そう言われたから、あたしはネコを朱羽から分捕った。

「あたしが洗います!」

 だって朱羽の裸見せたくないもの。

「いや、俺が洗う」

 だけど朱羽がネコを手渡さない。

「洗い物は得意なの!!」

「俺も得意っす」

「あんたはお黙り!! あたしが」

「俺が」

「まったく……。似たもの同士よね。ネコに相手の裸見られたからなんだというんだろ」

 そうぼやいた衣里がひょいとネコを摘まみ上げて、そのまますたすたと女風呂に行く。

「ほら、女性軍、入るわよ!!」


「みゃ~」

 哀切極まりないネコの声が響く中、朱羽は舌打ちしあたしは勝ち誇った顔で手を振って別れた。



 
 風呂場に漂う、イランイランの香料。

 なぜにこの家は、イランイランの匂いがするボディーシャンプーなんだろう。全員が全員、ネコまで朱羽の匂いを纏う。

 変な気分になるじゃないか!

 あたしはネコを泡立てる。

 このネコ、衣里に抱かれてきたくせに、あたしに洗えと隣に座り、背中を見せたのだ。

 そして髪を洗うあたしを見て、「みゃー」と鳴いてまた背中を見せる。シャワーで髪についたシャンプーを流すと、「みゃーみゃー」うるさく鳴く。

 そして洗い終わって、用意されていた黒いゴムで髪をまとめていると、また「みゃー」と鳴いて背中を向けた。ほっといて自分の身体を洗うと、こちらを向いてフーッと怒り、あたしの足を連続ネコパンチ。

「痛っ、爪立てないでよ。ちょっと待っててよ、今終わるから」

「みゃー!!」

 怒ったように鳴くと背中を見せたまま座り込んだ。
 
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