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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
その時ノックがされて、出入り口となる扉がスライドした。
「失礼します。皆さんお揃いですか? よろしければ、お夕食を」
そんな中、藤色の着物を着たおばあさんが迎えにきてくれて、皆を先導して先ほど中に入らなかった母屋に入った。
案内されたのは、和室の大広間。
縦長に二十畳くらいか。
やはりどうしてもやじまホテルを思い出してしまう。
若草色の着物を着た女性達が現われ、真ん中に年輪模様が入った、とても大きく重厚なテーブルを三つ運んできて、座布団を置かれた。
そして驚いたことに、移動式の机もやってきて、端に安置された。長細い机の上には横長に置かれてある氷が入ったショーケース。その中には、魚介類がずらりと並んでいて、ちょっとした水族館のようだ。
その奥に、白い帽子を頭に乗せ、白衣姿の……寿司屋の大将のような出で立ちの男性が立ち、ぺこりとあたし達に挨拶をした。
次々に若草色の女性達がやってきて、お盆にお吸い物らしきものとお新香をテーブルに並べていく。
「一体、どんな夕飯なんすっかね?」
木島くんはウキウキとしたようにして聞いてくる。
「これは刺身か寿司じゃないか?」
結城が答える横で、朱羽の胸の中のネコが魚を見て喜んでいるようだ。このネコ、あんな新鮮で大きな魚を餌で貰っているのかしら?
そして給仕達は、机の上に小さく妙なものを人数分置いていく。
「あれは……ホワイトボードかしら?」
本当に小さい。スマホくらいの大きさのものだ。
「お座り下さい」
そう言われたため、各々適当に座布団の上に座る。
あたしの横に朱羽が座ったけれど、胸の中のネコがあたしを見ている。
フーッと怒って見せると、朱羽の胸の中に潜り込んだ。
逆効果だったかしら。
机の下、朱羽があたしの手を握ってきた。
不意打ちで嬉しくて、照れ照れしてしまって俯いた時、主である名取川文乃が、まるで極妻かのような黒と花柄の着物姿で現われ、真後ろに座ったから慌てて手を離した。
あたし達の格好は、極妻ファミリーかのようだ。