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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

「この度は、ヴァイスを見つけて下さり、ありがとうございます」

 先ほどまでの不遜な態度ではなく、正座をして謙虚な態度だ。

「ヴァイス、こっちに来なさい」

「みゃっ」

 あれほどまで朱羽の身体から離れなかった白いふさふさネコは、「心得た」と言わんばかりに短く返事をすると、簡単に朱羽の胸元から飛び出て、名取川文乃の横にちょこんと座る。

 認めたくないけど、可愛い。

 性悪でなければ、なでなでしたい。


「ありがとうございました」


 名取川文乃は、指先を畳につけるのではなく、両拳を畳につけるようにして深く頭を下げた。

 不思議なお辞儀の仕方だ。


「あれは……」


 朱羽の目が細められる。


「僭越ながら当家自慢の魚介料理を、お声を頂いたものをさばいて、寿司を作りますので、お召し上がり下さい」

 すごい、目の前であれを捌いて作ってくれるの?


「ご注文はそこのホワイトボードに。なくなり次第、終了とさせて頂きます」

 いつのまにか、寿司職人……板前さんが五人になっている。


 誰もが食指を動かした時――。


「それと、当家においては"非常識"人間は食うべからずという訓示に従い、ご注文の際には必ず"漢字一字とひらがなでの読み"をお書きください」

 場はざわめいた。

「正解した漢字であれば、お寿司を作らせて頂きますが、不正解の場合は申し訳ありませんがご遠慮下さい。注文はまず私に。そして正解者はそちらに並んで頂きます。ひとつでも複数でも構いませんが、同じものを複数はいけません」

 あたしはざっと魚介類を見た。

 漢字一字で書けるもの!?

 漢字一字で書けないと非常識人間なの!?
 
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