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壊してほしい
第1章 拾った女の子
ぜんぶ、作り話かもしれない。
本当は帰る家があって遊び歩いてるだけなのかもしれない。
学生証だって偽物かもしれない。
―――けど、
事実はどうだって良い。
あの傷痕と、
目の前で涙をぽろぽろ溢す雫石はホンモノだ。
いたたまれず立ち上がり、抱き締めた。
『……それ以上喋るな。
辛くなるだけだ』
雫石は震えながら声を殺して泣いている。
―――祖父は偏屈だった。
厳しさはあまり無かったけれど、
俺が学校をサボったら笑い飛ばした。『嫌なら行かなくて良いじゃないか。
参考書に書いてあることだけが勉強じゃない』
笑われると、
いけないことをしている感覚になって以降毎日真面目に学校に通った。
カフェ【ひいらぎ】には、団体客は来ない。
大体が1人客ばかりだ。
BGMもかけていない。
客はフラッと立ち寄りゆっくりと文庫本を読んで、
オーダーした食べ物を味わって満足げに帰ってく。
経営ははっきり言って芳しくない。
流行りのカフェテラスのように話題になることもない。
――でも。
祖父が作りたかった店というのがこの頃分かる。
本当は帰る家があって遊び歩いてるだけなのかもしれない。
学生証だって偽物かもしれない。
―――けど、
事実はどうだって良い。
あの傷痕と、
目の前で涙をぽろぽろ溢す雫石はホンモノだ。
いたたまれず立ち上がり、抱き締めた。
『……それ以上喋るな。
辛くなるだけだ』
雫石は震えながら声を殺して泣いている。
―――祖父は偏屈だった。
厳しさはあまり無かったけれど、
俺が学校をサボったら笑い飛ばした。『嫌なら行かなくて良いじゃないか。
参考書に書いてあることだけが勉強じゃない』
笑われると、
いけないことをしている感覚になって以降毎日真面目に学校に通った。
カフェ【ひいらぎ】には、団体客は来ない。
大体が1人客ばかりだ。
BGMもかけていない。
客はフラッと立ち寄りゆっくりと文庫本を読んで、
オーダーした食べ物を味わって満足げに帰ってく。
経営ははっきり言って芳しくない。
流行りのカフェテラスのように話題になることもない。
――でも。
祖父が作りたかった店というのがこの頃分かる。