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壊してほしい
第1章 拾った女の子
夕方、
ブラウンのコートを着こんだ女性・
サラリーマン風のアタッシュケースを抱えた男性が来店し、

2時間ほど本を眺めて(もちろんケーキやコーヒーも食して)帰っていく。



寒いこの時期はどうしても客が少ない。

特に夜は皆自宅で暖を取るのだろう、
春〜秋とは違って5時以降はめっきり客足が減る。



ストーブの上にヤカンを乗せる。

本棚を拭いている雫石に『雫石、
昼ごはん今からなんだ。
食べよう』と声をかけた。


『カウンターに座ってて』
と座らせておく。



『ごめんね。
お腹空いたでしょ』


『うん。ペコペコ〜』

氷月は苦笑する。


雫石は畏まっている時と緩んだ時の落差が激しい。

子供っぽくなるこの表情が面白いと思った。



―――『はい。オムライス』

カタンと雫石の前にオムライスを出す。

氷月も並んで座った。
『と、水』グラスを置く。

『美味しい……』
雫石はパクパク頬張る。


『フツーのオムライスだよ。
俺、下手だしね』


『めひゃめひゃおいひぃですよ?』


『…………そんな、
冬場のリスみたいに………』
思わず笑ってしまった。
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