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淳、光と闇
第29章 省吾の入院
そして…患者さんが元気になって…
退院する時に笑顔で
「ありがとう…」
この言葉を私達は待っています。
あの笑顔の為に私達は時として鬼となるのです。
逆に不幸にして患者さんが逝ってしまうと…
美紀さんは全て自分の責任と自分を責めるのです。
決して私達を責める事はしません。
そんな人だから…
私達は厳しい仕事にも耐えて頑張れるのです。
ここでは誰一人として美紀さんを…
恨むものや嫌うものはいません…」
結花は省吾にそう言って顔を覆った。
「私達がもっとしっかりしていれば…
美紀さんが悲しい思いをする事はないのです。
私…悔しい…自分に腹が立ちます。」
省吾は黙って話を聞いた。
「何故…わしに…
そんな話をしてくれるのじゃ?」
「省吾様は…
この地方では有力者です。
だから…少しでも現場を知ってほしいと…
命の最前線…この病院と言う
戦場を知ってほしくて…
今こんなお話を致しました。
省吾様…貴重なお時間を頂いて…
ありがとうございました。」
結花は立ち上がると一礼した。
「いやいや…
今の話…省吾はしっかりと…
聞かせてもらった。
為になる話を…ありがとう…」
「失礼いたします…」
立ち去ろうとした結花は
「省吾様…
淳が省吾様の担当ですが…
淳は看護師として…
ここの看護師の中で…
一番厳しく一番優しい看護師ですよ。」
にっこりと笑って結花は立ち去った。
「淳ちゃんが…
一番厳しい看護師か…」
微笑みながら省吾はソファーに座って
周りを見ている。
「あ、旦那様…
どうしたんです?
こんなところで…」
「淳ちゃんか?
今、結花さんと言う看護師さんに
少し話を聞いていたんじゃよ。」
「結花に…
そうですか…で、
旦那様…少しは参考になりましたか?」