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第30章 健と省吾

「先生…もっと早くならんか？」

「お前の先読みに叶うやつはいないよ。」

こうして信じられない速さで

手術は終った。

手術室から出てきて健と淳は

ハイタッチで

「お疲れ！！」

由美が駆け寄ってくる。

「だ、旦那様は？」

その表情は青ざめていた。

淳が由美に

「由美さん…手術は…
大成功でしたよ…
輸血も最小限にとどめました。
秘蔵はすでに活動しています。」

「あ、あぁぁぁ…」

由美はがっくりとその場に崩れ落ち

両手で顔を覆った。

「淳ちゃん、
有難う…有難う…」

初めて見る由美の泣き顔…

「旦那様…
由美は…また…
旦那様のおそばに…
入れるのですね？
いても…宜しいんですよね？」

そう言って由美は号泣した。

そっと由美の肩に手を置いて淳は

「由美さん…
まだまだ…旦那様の…
お世話を…お願いしますよ？」

「は…い…」

由美は淳にすがって泣いた。

「さて…終った…
じゃじゃ馬…
俺の役目は終った。
じゃあ、昼寝してくるよ。」

健は煙草を咥えてその場を去っていった。

「先生…有難う御座いました。」


しかし、健には災難が待っていた。

美紀の耳に淳が差し出した

褒美の件を聞き出して

「健！！あなた…
淳の唇を…手術の褒美に…
一体、何考えてるの？？」

「そ、それはだな…」

「それは…何よ？」

「い、嫌…だから…その…
わ！！美紀！話を聞け！！」

「問答無用！！」

健は逃げながら内科の詰め所に

走りこんで

「じゃじゃ馬…
助けてくれ…」

「先生…自業自得です！！」

あっけなく淳に捕まって

健は美紀に差し出された。

「さぁどう言う事か…
ゆっくり話を聞きますね？」

「た、助けてくれぇ…」

美紀に引きずられて健は悲鳴を上げていた。

「たまには…
良い薬ね？」

淳が笑っていた。