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淫徳のスゝメ
第3章 私が最も華やいだ頃のこと




 夕餉時、立食パーティーが開催された。


 私達は個室に戻ってシャワーを浴びると、メイドの手を借りながら、夜会服でめかしこんだ。


 エントランスは、一段ときらびやかに様変わりしていた。

 忙しなく立ち回るメイド達が、軽食やデザートをのべつ補充し、美しく盛りつけを整えている。巨大な金魚鉢は珍しいフルーツのコンポートで満たしてあった。中には裸体の美少女が二人。彼女達がおたまじゃくしの代わりになって、器に具材を盛りつけた。

 奢侈なフリルの重なるような、軽らかで濃厚な組曲を演奏する楽団は、音楽協会の理事を母に持つ上級生が呼び寄せたものだ。


 私達はバロック舞曲に合わせて踊った。

 定石のステップはやがて女と女が愛し合うような動作に移った。周囲の花達は言わずもがな、私とまづるさんも唇を重ね、吸い合い、指でじゃれている内に、ドレスの奥が火照っていった。



 私はまづるさんと裏手に出て裸になった。


 愛撫を求め、キスをして、麻薬のような指に踊らされてあっけなく銀白色にさらわれた。二度目のエクスタシーに連れ去られかけた時、みゆきさんが割り込んできた。


 私達は、きらびやかなエントランスに連れ戻された。

 二百余人で結合することを、誰かが提案したらしい。


 私達は一つになった。ありとあらゆる結合部位を征服し、征服された。


「入会したら、姉妹の契約を結ばれるの?」

 私と繋がっていた少女の一人が、問うてきた。

「私がですか」

「ええ。早良さんと」

「──……」


 私は、二十ほどの女体越しに親友を望む。ロイヤルミルクティー色の巻き毛に艶やかな肢体、玲瓏な顔──…どんな花達より気高くたおやかなまづるさんと一緒にいる時の私は、確かに、美しい宝石を手に入れた少女のように浮かれている。


 誰のものにもならないで、誰を占有することもない。


「いいえ。私は、そういうものには関心ないから」



 『ナゼルの夜会』が流れていた。肉体の解放、快楽を浴びるようにセックスという美徳に溺れた私は、永眠にも引きずりこまれる心地で顫えていた。
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