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砂の人形
第5章 引力
 砂漠に出てから、もう随分と時間が経っていた。夜が深くなり、群青の空には明るい月が出て、金色の砂のうねりを照らしている。風は凪いで、世界は時が止まったように見えた。駱駝の蹄は砂に埋まり、自分たちの進む足音も聞こえない。耳が痛いほどの静寂の中で、背中にテルベーザの緩やかな鼓動を感じる。そのリズムが愛しいと思うほど。素直に彼の言葉を信じられない自分がもどかしい。

 さっきの会話で分かってしまった。テルベーザは、私がルニルカンへ行くことを良く思っていない。本当は、私と離れたくないと思ってくれている? それなら今すぐ行動して。私をあなたのもにして。ここならもうお父様の力も、双子の監視も及ばないから。
 それともやっぱり、テルベーザはお父様と繋がっているの?

「あの砂丘の裏へ回り込んだら、今日は休みます」
「え?」

 夜の間は進み続けるものだと思っていたから、私は聞き返した。

「あそこで? 城の使いに見つからないかしら」
「恐らく問題ありません。地図にないオアシスを目指して進んでいますから、この方角を捜索することはまずないでしょう」
「でも、夜の内にできるだけ進んでおきたいわ」
「城には暖房具があるから気づかないかもしれませんが、砂漠の夜は冷え込みます。特に一時から三時の間は風も出ます。それまでに天幕を張り、備えておかなくてはいけません」

 テルベーザの言うとおり、数時間も経つと冷たい風が砂を吹き上げ始めて、視界が黄色く霞み始めた。その頃には砂丘のふもとまで来ていて、テルベーザは私の部屋から持ち出した窓掛布で小さな天幕を建ててくれた。余った布は、隣に座らせた駱駝たちに掛けた。
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