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砂の人形
第1章 監視下の行為
「失礼します」

 私が食べ終わる気配を感じたのか、テルベーザは振り返った。私は顔を背ける。そんな態度にも、彼はすっかり慣れている。寝台の縁に片膝をついて身を乗り出し、それから、私の体に巻きついた掛布団をやんわりと下ろす。私の髪をかきあげ、首筋を、肩を、背中をつぶさに確認する。前夜の跡を調べてから、それが隠れる衣装を選ぶためだ。テルベーザのアザだらけの指が、肩に触れる。

「何か、肩に巻くものを準備します」
「いつも言っているでしょう。あなたがつけなければいいのよ」
「申し訳ありません。次からは必ず」

 テルベーザは一礼して、衣装部屋に向かった。
 彼はときどき、私を強く吸い上げる。せめて見えない場所にすればいいのに、大体が背中か首で、場所によっては隠すことが難しい。今回の場所ならなんとかなるだろう。

 今夜は年に一度のパレードの夜。久しぶりに国民の前に出るのだから、こんなものが見えたらきっと良くない。

そうだ。国民の前に出るのは、あの日以来。ちょうど一年前、パレードの後……。いや、もうその事は考えないって決めた。そもそも、いつまでも彼のことを想うのも止めるって、決めたはずじゃない。私には他にするべきことがある。そう、何か立派な、王女らしいこと……。

 もうその約束を、彼が忘れてしまったとしても。
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