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砂の人形
第1章 監視下の行為
 お父様の命令でこんなことが始まってから、私はよく夢を見るようになった。殴りつけるような嵐の中を、枯葉みたいな惨めな小舟で流されていく夢。海は好き勝手に右へ左へ、私を転がし、揺さぶり、そうかと思えば激しく下から突き上げる。私はなすすべなく、船の中で怯えている。もうひとりの私が、私に向って手を伸ばしている。そこでいつも目覚める。

 その頃には全部が終わっている。ぎらつく昼の日差しは消えて、ひんやりとした宵の空気が、火照った素肌を冷ましていた。いつの間にか、私の体はきれいになっている。服は着ていない。あの行為と連続しているのは、そこだけ。

「姫様」

 扉の向こうから、テルベーザの掠れた声がした。人目をはばかって、精一杯に潜めた声。だけどテーゼ。この狭い城の中で、私たちのこと、隠せるはずないじゃない。みんな噂してる。細かいところは間違っているけど、つまるところの事実を、皆知ってる。
 私とあなたが毎日、深く触れ合っているって。

「入って」

 敷布を手繰り寄せて、私も小さく答えた。すぐに扉が薄く開き、テルベーザが入ってくる。頭に巻いたターバンの隙間から溢れる砂色の髪、落ちくぼんだ瞳……毎日あんなことをしているのに、彼はまだ、私を真っ直ぐ見つめてくる。私はきっと二度と、そんなことできないのに。

「食事をお持ちしました。それから、お着替えを」

 食事の乗った盆を私に押し付けると、テルベーザは窓掛布を開いた。暮れた群青の空には白い月が冴え、眼下一面に広がる大地は黄金の砂を輝かせている。白煉瓦の家々の窓辺には徐々に鉱石ランプの明かりが灯され、砂漠のアルムカンの目覚めが近いことを知らせていた。

 いつもと同じ夜の始まり。独りきり、味のしない果物や腸詰めの食事。私は何も考えないように努める。ただ、こちらに背中を向けて立つテルベーザが今、なにを考えているのか、知りたいと思う。でもどうせ私の期待には応えてくれないだろうから。だから結局、なにも聞けない。 なにも、話せない。
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