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茜色の空に
第6章 秋風の狂詩曲
「バイトで初めて会ったわけじゃないんですね」

私が言うと、彼は寂しく笑って言った。

「あいつの母親の店で頼まれたのは本当だ。
これはチャンスだと思ったよ。
いきなり話しかけても変質者扱いされるだろうし、純と重ねてしまうのがわかってたから、近くで見守ってたよ。
海渡はしらねぇけどな。」

彼の生き甲斐は、海渡の成長を見守ることになっていった。

だから一緒に仕事することになり、余計に彼の優しさや素直さが心の支えになってたそうだ。

「最初はあいつ、金は受け取れねぇって断ったけどな。
俺はあいつに、俺はおまえの父親だから親父の金なら迷わず受けとれって言ったんだ。
あいつ、俺の前でそれ聞いて大泣きしてた。
あいつは親の愛なんて知らずに育ったからな…」

そういい、嬉しそうに彼は笑った。

本当に親子だったらいいのに、そう私は二人に対して思った。

「そばにいてやれないのは辛いが、母親と縁を切るためには誰にも行き先を告げず消えるのが一番だ。
20歳になったら戸籍を抜けとも言った。
だから倫子ちゃん…あいつを許してくれ。
好きで倫子ちゃんと離れたわけではないんだ…」

そういって、一郎さんは頭をさげた。

わたしは小さくつぶやいた。

「生きてさえいれば、きっといつか会えますよね」
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