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茜色の空に
第7章 春の嵐
翌日、藤原さんから連絡があった。

『今週の土曜日、もし予定がなければ映画でもいかない?』

ちゃんと男性にこんな風に誘われるのは初めてなので、かなり緊張してしまう。

そういえば、海渡とはこういうデートみたいな事はしなかったな……今更ながら少し後悔して思い出してしまった。

少しだけ忘れてしまいたい……
どんなに探しても、手がかりさえ掴めない現実から逃れたかったのかもしれない。

『土曜日はバイトもお休みなので予定はありません。』

メールを送りつつ、美香だったらもっと可愛い返事が送れるんだろうな、と少し落ち込んだ。

男の人と二人で出掛けるなんて、一郎さん以来で少し楽しみになった。

同時に、彼に対する罪悪感に苛まれる。

このまま時間をかけて、初恋なんて忘れてしまうんだろうか……

胸の奥がズキズキと痛い。

こうやって、私は次第に父と母のように無関心で自分の事しか考えない大人になっていくのだろうか?

とても、その事実が私には怖かった。

きっと、藤原さんの大人の優しさに甘えていたんだと、今は思う。

解ってはいたのに、私は寂しさに抗う事はできない普通の人間だった。

そのせいで、誰かを傷つけるなんて思いもせずに。

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