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茜色の空に
第7章 春の嵐
答えを保留にし、藤原さんとは別れて帰宅する。

別れ際に、彼に言われた。

「本気で俺が好きか嫌いかで、ちゃんと考えて欲しいな。
そして、藤原さんじゃなくて、樹って呼んで。」

家のドアを開けて、ベッドにそのまま倒れ込む。

私は、小さくつぶやいた。

「一体あなたは、どこにいるのでしょう……」

瞳が涙で滲んでいくのを感じる。

本当は解っていたんだ。

こうやって、あなたを忘れて他の誰かを好きになる事。

だから、手紙であなたは自分を忘れてと言っていた事。

そしてあなたも、きっと別の誰かを好きになる。

悲しいけど、認めたくなくて逃げていた。

泣いているだけの子供じゃいられない。

未来に向かって、私たちはどんどん大人になっていくんだろう。

全てを想い出に変えて生きていく。

そして、樹さんの事を考えた。

きっと私は、彼にどんどん惹かれていくんだろう。

最初は、樹さんが宇佐美くんにそっくりすぎて、驚きしかなかったのに。

丁寧な言葉遣いやさりげない優しさに、自分が癒されているのは事実なのだ。

「どうすればいいんでしょう……」

ベッドにつっぷしたまま、私は携帯を手に取る。

連絡したのは、最も信頼するあのひとだった。
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