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第8章 雪の華

「で、名前はなんていうの？」

奥さんの名前は、雅美さんといって誠さんのもともと美容師仲間らしい。

同じ学校で出会って、それで学生のうちに結婚したそうだ。

彼女にそう聞かれて、とりあえず俺は答えた。

「水瀬海渡っていいます。
その･･･事情があって親と離れて、今日ここまで来たところです。」

俺はできるだけ礼儀正しく見えるように、そう答えた。

雅美さんは、俺を不審な目で見つめてこう言う。

「あんた、ひょっとして家出してきたの？」

俺はとても動揺した。

まぁ、高校生が突然高校を辞めて地元を飛び出して、こんな離れた土地に来ることなんて大抵決まっている。

ひょっとしたら、折角逃がしてくれた親方の気持ちを無駄にしてしまう結果になるかもしれない。

俺は拳を力強く握りしめて言った。

「はい･･･実の親にどっかの親父に売られそうになって地元から逃げてきました。」

もうここまで来たら隠す事なんてないだろう、そう思って雅美さんの目を見て言った。

すると、彼女の反応は意外なものだった。

「やっぱりねぇ･･･あたし解るんだよね。
あたしの親もそういう奴だったからさ、あんたのその無数にある傷は親につけられたもんだろう？
いくらヤンキーでも、親につけられるんじゃなきゃ胸元にそんな無数の傷なんてできたりしないよ。」

彼女の瞳は、とても優しい色をしていた。

俺が驚いた表情をして彼女を見ていると、彼女は微笑んで言った。

「ただでさえ、そんな金髪で青い目なんて好奇の目にさらされてきただろうに･･･あんたがよかったらうちで住み込みで働きな？
うちにはこの娘がいて少しうるさい家庭だけれど、あんた一人雇えて住まわせられるくらいの稼ぎはあるからさ。」