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茜色の空に
第8章 雪の華
こんな離れた土地で優しくされるなんて、思いもしなかった。

もし生き延びる為なら、ババアと同じ水商売でもやろうと思っていた。

倫子の笑う顔が一瞬浮かんで、そして消えた。

「こんな俺でよかったら、これからお願いします。」

俺は頭を下げて言った。

そう、それからは慣れない事の連続だった。

方言はそんなにない地域だったものの、接客で人に愛想よく喋る事なんか今までできた試しがなかった。

敬語なんて、適当にしか使ったことがなかった上に相手に優しく気を使うなんて事がまともにできてたら、恐らくあんなに高校で友達が出来なかった俺にはならなくて済んだかもしれない。

そして、仕事で使う道具のメンテナンスやタオルとかの備品の洗濯、店内の掃除とあとは高木夫婦が保証人となって美容師の夜間の学校に通わせてもらった。

もともと肌は強い方だったのでそこまでひどくは荒れる事はなかったけれど、それでも冬にはアカギレになったりたまに手湿疹ができたりと、それなりに大変だった。

昼間は仕事で夜は勉強・・・定休日も勉強で俺は最初の二年間はほぼ仕事と勉強に明け暮れていた。

でも逆にそれが、倫子と離れた寂しさや空しさを忘れさせてくれるきっかけにもなったかもしれない。

こうして俺は、なんとか美容師の国家試験に合格し美容師免許を得る事になった。
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