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茜色の空に
第8章 雪の華
夜間の美容師学校では、やはり何人かの女子に告白されたりはした。

しかし、俺はやはり誰とも距離を置いて仲良くしようとはせず、2年間を終えてしまった。

倫子にあてた手紙で、俺は倫子に俺を忘れて幸せになれと書いた・・・でも俺の中で恋人にするのは倫子だけで充分だ。

そう思っていた時に、不意に高木夫婦の娘の鞠子が俺に聞いてきた。

「ねーねー、海渡兄ちゃんは彼女とかいないのー?」

小学校一年位だから、そういうのが興味ある年頃なんだろうな・・・俺はそう思って答えた。

「んー、彼女はいねぇぜ。
ただ、ずっと好きな女なら心の中にずっといるんだよなぁ。
ただ、もうずっと会えないけどな・・・」

俺がタオルを畳みながらそう言うと、鞠子は首をかしげて言う。

「にーちゃんは、その人に会いにいかないの?」

鞠子の言葉が思いの外、心に刺さった。

会いたくならないのはきっと嘘になる。

でも、地元に戻るわけには絶対にいかない。

誰とももう連絡がとれない状態だ。

俺は平然を装いながら、鞠子に言った。

「そうだな、たぶん生きてればそのうち会えるさ。」

力なく、俺はそうつぶやいた。

倫子はもう、きっと俺と違って頭もよかったからどっかのいい大学にいって、普通に誰かを好きになって結婚して、そして俺の事は初恋のいい思い出として過ごしていくんだろう。

最初からあいつとは住む世界が違うんだ・・・俺は心の中にそう言い聞かせる。

胸の奥が、ズキズキと痛んだ。
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