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茜色の空に
第2章 青い春
帰宅して制服を脱ぎ、姿見を見てわたしはぎょっとした。

首筋に一ヶ所だけ、目立つ赤いアザがつけられていたのだ。

「本当に…信じられないひとっ!」

わたしは思わず悪態をついた。

政輝さんならきっとあんなことしないし、紳士的な態度で接してくれるにちがいない。

思いを伝える前に初恋は終わってしまったけれど。。。

でも、涙は不思議と出なかった。

思い出すのは首筋を伝う彼の唇と熱い吐息と愛撫する舌、鋭いまなざしと自分に正直な言葉…

思い出して顔が熱くなり、胸がドキドキ高鳴る。

一体どうしたというのだろう。

そんな考え事を打ち破るように、下のフロアから怒鳴り声がするのが聞こえてきた。

私の両親は、私の物心ついたときから喧嘩ばかり。

二人とも弁護士をしている建前上、離婚という選択肢はないのだろう。

父にも母にも愛人がいるのは知っている。

子どものために離婚しない…そう言い訳しながらふたりは偽りの結婚生活を続けているのだ。

そんな息苦しい場所から私の心をやすらげる場所をつくってくれたのが、家庭教師の政輝さんだった。

彼に教えられているときは、この冷たい家庭を忘れることができたから。

思えば、彼には憧れとか安らぐ場所や逃げ出す場所を求めていて、彼に対する気持ちは恋心とは違っていたのではないだろうかとも思えてきた。



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